社会人として組織で生きることを強く意識するようになってから、世界各地で言い伝えられている格言や「○○の法則」などを、物事を考える際の参考にしてきた▼心配する必要のないことをあれこれと心配する様子を例えた「杞(き)憂(ゆう)」(中国古代の「杞」の国の人が天が崩れ落ちてこないかと心配したという故事)が好きだったが、対岸からのミサイル発射や気候変動に伴う災害が相次ぐ時勢で、そのような言葉を座右に置いているのは〝おめでたい〟と言える。一方、日本で1990年代に流行した「マーフィーの法則」は、再評価されてもいいのかもしれない▼<失敗する可能性があるものは、いずれ失敗する><落としたトーストが、バターが塗ってある面を下にして着地する確率は、カーペットの値段に比例する>などは、必ずしも科学的とは言えないものの、うなずいてしまう。要するに、最悪の事態を想定し備えを-ということだ▼とはいえ、それが難しいから、失敗を免れられなかったことが、身の周りを中心に星の数ほどある。社会的な事象では、津波で全電源を喪失した2011年の東京電力福島第1原発事故が当てはまる▼中国電力が島根原発2号機を来年8月に再稼働すると発表した。事故発生時の30キロ圏内46万人の避難態勢や航空機突入への備えなど課題は山積する。「杞憂だね」と片付けたいが、福島の事故を知るだけに身構える。(万)