歩行訓練をする永瀬琉生さん=松江市西浜佐陀町
歩行訓練をする永瀬琉生さん=松江市西浜佐陀町
ブラインドサッカーの練習をする新宮愛菜さん(左)と岡桐生さん=松江市西浜佐陀町、島根県立盲学校
ブラインドサッカーの練習をする新宮愛菜さん(左)と岡桐生さん=松江市西浜佐陀町、島根県立盲学校
電車内の優先席付近のつり革が他より大きいことを触って確かめる生徒ら=松江市中原町、松江しんじ湖温泉駅
電車内の優先席付近のつり革が他より大きいことを触って確かめる生徒ら=松江市中原町、松江しんじ湖温泉駅
歩行訓練をする永瀬琉生さん=松江市西浜佐陀町
ブラインドサッカーの練習をする新宮愛菜さん(左)と岡桐生さん=松江市西浜佐陀町、島根県立盲学校
電車内の優先席付近のつり革が他より大きいことを触って確かめる生徒ら=松江市中原町、松江しんじ湖温泉駅

 目の不自由な子どもたちが通う盲学校。島根県内で唯一の県立盲学校(松江市西浜佐陀町)には幼稚部から高等部までに17人が在籍する。児童、生徒の学びの様子を取材した。(坂上晴香)

 学校には幼稚部▽小学部▽中学部▽高等部本科▽高等部専攻科-の課程があり、弱視や全盲の子どもたちがいる。盲学校など特別支援学校では学習や生活の困難を克服・改善するための「自立活動」という授業がある。

 高等部1年の岡桐生さん(16)と新宮愛菜さん(15)は自立活動の授業を通し、自分の見え方を理解し周囲に話す大切さを学ぶ。岡さんは中学部から、新宮さんは高等部から盲学校に通う。2人とも先天性の視覚障害がある。

 授業では、視野や見えやすい色など自分の見え方をiPad(アイパッド)にまとめる。新宮さんは「曇りで薄暗くなったら見えづらい」「5メートル近づくと人の判別ができる」などと記す。雨の日で薄暗かった時、廊下がぬれていたことに気付かず、滑って階段から落ちたこともあった。

 周りのサポートを得るには自分で自分のことを伝える必要があるが、先天性の視覚障害の場合、健常者がどのように見えているか分からず、伝え方が難しい。職場体験で岡さんが「2メートル近づいてもらうと顔がよく分かります」と具体的に伝えた姿を見て、担任の佐々木照実教諭(48)は「成長を感じた」と笑顔で話す。

 体を動かすことが好きな岡さんは普通学校に通っていた小学校時代、球技に制限がかかっていた。盲学校に入り、障害の有無に関係なく楽しめるブラインドサッカーを知った。ボールに金属が入っており転がると音が鳴る。2人とも県内のチーム「島根オロチビート浜田」に所属。放課後などに週3、4回練習する。目標は公式戦初勝利。岡さんは「自由に動くことができる楽しさを感じる。チームの仲間を増やしたい」と話す。

 「自立活動」は校外でも行う。中学部1年の永瀬琉生さん(12)は7月、初めて1人で登校を試みた。それまで一緒に登校していた教師は、気付かれないように後ろを歩いて見守った。

 路線バスに乗車して学校に到着すると、「バスに乗っている間、大きな声で歌っていたよね」と教師が指摘した。周りの乗客が何か言いたそうだったことも伝えた。視覚からの情報がなく、状況判断が難しい永瀬さんに、公共の場での適切な行動を教えた。

 生徒7人が一畑電車の松江しんじ湖温泉駅(松江市中原町)に出向き、列車に触れたりホームの高さを学んだりする授業もあった。ホーム転落事故を防ぐ狙いはもちろん、通学で普段利用する児童生徒も座席の配置や運賃箱の構造を正確に知らないまま利用していることが多いためだ。

 生徒は白杖(はくじょう)を線路まで下ろして高さを感じ取り、電車とホームの隙間の広さも白杖を動かして確認した。高等部1年の新宮さんは優先席付近のつり革のみ黄色になっていることを発見。「週1、2回電車通学をしているが気付かなかったことがたくさんあった」と学びを得た様子だった。