愛用のミシンでグラブを組み上げる松浦さん
愛用のミシンでグラブを組み上げる松浦さん
解体されたグラブ。組み上げの技術があるからこそ、細かい部分まで修理ができる
解体されたグラブ。組み上げの技術があるからこそ、細かい部分まで修理ができる
お手製のグラブを手に球児への思いを語る松浦さん
お手製のグラブを手に球児への思いを語る松浦さん
愛用のミシンでグラブを組み上げる松浦さん 解体されたグラブ。組み上げの技術があるからこそ、細かい部分まで修理ができる お手製のグラブを手に球児への思いを語る松浦さん

 「売って終わりではなく、修理やメンテナンスで継続的に関わっていく。選手と一緒に歩きたい」。出雲市平田町にある野球用品店「マツウラスポーツ」代表の松浦康之さん(48)がモットーを笑顔で語る。かつて甲子園を目指した元球児。選手を見つめるまなざしは温かい。

 高校卒業後、元プロ野球選手の父が営む店を将来的に継ぐために、大手スポーツ用品メーカーで修業。プロ野球選手用のグラブの製作に携わり、腕を磨いた。

 同店の強みは修理の技術だ。革の裁断から縫製、組み上げといったグラブの製造工程のすべてを一人で行える技術を生かし、連日の練習で破れたグラブや、つま先に傷みの出たスパイクをよみがえらせる。

 「品ぞろえは量販店にかなわないが、修理には自信がある。他店で『直せない』と言われた野球道具をウチに持ってこられるお客さまもいる」。全国から注文が寄せられる。
 修理や接客、配達などで多忙な日々。苦労が報われるのは、関わりのある高校が甲子園出場を果たしたときだ。

 今春は、店から程近い平田高が選抜高校野球大会の21世紀枠出場校に選出。創部70年目でつかんだ初の甲子園切符に、松浦さんも喜びをかみしめたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、大会は中止になった。

 「甲子園用のユニホームなどを納品し、『さあ甲子園だ!』というタイミングでの中止決定。選手や学校関係者、地域の人々、みんなの甲子園がなくなってしまった。ショックは大きかった」。さらに、夏の甲子園「全国高校野球選手権大会」とその島根県予選も中止。思わぬ敵に悲願は阻まれたかに見えた。
 希望の光が差し込んだ。選抜出場予定の32校による「甲子園高校野球交流試合」の開催が決定。平田ナインは大会第2日の8月11日、創成館(長崎)戦で夢の舞台に立つ。「忙しいけど、やっぱりうれしい」と松浦さんも急ピッチで準備に取り掛かっている。

 「選手たちの上達や甲子園出場を後押ししたい。『マツウラスポーツと一緒に甲子園に行きたい』と思ってくれたらうれしい」。球児への思いが笑顔ににじむ。

◇マツウラスポーツのインスタグラムURL

https://www.instagram.com/matsuurasports/?hl=ja

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 自分の好きなことに打ち込み、自分らしく生きる-。そう願っても、思い通りに過ごせている人ばかりではないかもしれない。ライフスタイルが多様化した現代社会。こだわりと情熱を糧に、山陰両県で自己実現の旅を続けている人たちの姿を連載する。