2011年3月11日を振り返って描いたイラスト(アベナオミさんのブログより引用)
2011年3月11日を振り返って描いたイラスト(アベナオミさんのブログより引用)
アベナオミさん著「日めくり 被災ママが教える後悔しないための1日1防災」(PHP研究所)より
アベナオミさん著「日めくり 被災ママが教える後悔しないための1日1防災」(PHP研究所)より
アベナオミさん
アベナオミさん
2011年3月11日を振り返って描いたイラスト(アベナオミさんのブログより引用) アベナオミさん著「日めくり 被災ママが教える後悔しないための1日1防災」(PHP研究所)より アベナオミさん

 東日本大震災当時、1歳7カ月の長男の子育て中だったイラストレーターのアベナオミさん(35)=宮城県多賀城市。被災経験を会員制交流サイト(SNS)で発信したり、イラストを交えた著書を出したりして、いざというときの備えを呼び掛ける。著書「被災ママに学ぶちいさな防災のアイディア40」(学研プラス)の内容も交えながら、防災意識の持ち方を聞いた。

 アベさんは当時住んでいた宮城県利府町の自宅で被災生活を送った。停電、断水が続く上、物流もストップ。2週間後に数時間だけ開店したスーパーは、前日から丸1日並んでようやく買い物ができる状態。長男と暮らすアベさんに利用は不可能で、食品や日用品をストックする必要性を痛感した。

 大切なのは停電、断水が起きた状態で「いつもの生活」を続けることを想像し、防災用品をそろえることだ。スマートフォンやタブレットが欠かせないならポータブル電源やバッテリーを何台か用意しておく。普段食べているレトルト食品やお菓子、コーヒーなどの嗜好(しこう)品は、多めに買っておく。

 被災地では生鮮食品は貴重品で、震災当時はキャベツが1玉千円にまで高騰した。だから野菜ジュースや青汁の粉末も備蓄しておきたい。オムツや生理用品などの日用品も、普段使うものを一つ多めに買っておくと、それがそのまま備蓄品になる。「未開封でもう一つ」の状態を常につくるといい。

 困るのは水洗トイレだ。たとえ外から水をくんできても、下水管が壊れたら使えない。携帯トイレはごみとしてたまる。ごみ収集は当時2週間停止したが、長男のオムツ用の防臭袋があり、助かった。

 車社会ではガソリンを欠くことはできないが、当時は被災4週間後に、ようやく1時間並んで10リットルの給油ができた。ガソリンが十分あれば、遠くの親戚宅に避難できたり、断水中でも少し遠出して温泉に入れたりと、選択肢が増える。今ではメーターの半分まで減ったら必ず給油するよう心掛けている。

 さらにアベさんが被災を教訓に力を入れているのは「自宅の片付け」だ。当時は地震で散らかった室内から貴重品を探している間に津波にのまれたケースがあった。避難準備や水道水の確保といった行動の前に「片付け」という作業が発生すると、素早い行動に移せない。

 アベさんはこの10年で家の中のものを減らしたり、落下や転倒を防ぐ滑り止めを徹底。その結果、2月13日に起きたマグニチュード(M)7・3の地震で、床に落ちたのはしゃもじ1本と少しの書類だけだった。

 今後起きるとされる南海トラフ地震なども、山陰からは離れているとはいえ無関係ではない。食料や日用品、ガソリンなどが被災地へ送られたり、物流が止まったりして被災地以外でも物不足はあり得る。どこで災害が起きても、普段の備えは生きる。

 アベさんは「ガチガチの『防災生活』ではなく、普段の生活を楽しみながら工夫していくのがいい。家族全員で続けられる体制をつくってほしい」と呼び掛けている。  (増田枝里子)