妊婦の体を模したジャケットを着て、不便さを体感する社員=松江市東出雲町揖屋、樋野電機工業
妊婦の体を模したジャケットを着て、不便さを体感する社員=松江市東出雲町揖屋、樋野電機工業
生後間もない赤ちゃんの人形を抱いて、笑顔を見せる社員たち=出雲市塩冶神前2丁目、今岡工業
生後間もない赤ちゃんの人形を抱いて、笑顔を見せる社員たち=出雲市塩冶神前2丁目、今岡工業
妊婦の体を模したジャケットを着て、不便さを体感する社員=松江市東出雲町揖屋、樋野電機工業
生後間もない赤ちゃんの人形を抱いて、笑顔を見せる社員たち=出雲市塩冶神前2丁目、今岡工業

 子育てしつつ働く女性の割合が全国的に高い島根県では共働き世帯の割合も高く、家事や子どもの世話が集中する女性が両立に悩むケースは珍しくない。家庭での役割分担や職場に必要な配慮など仕事と子育てを続けるためのヒントを求め、県内企業で開かれたセミナーに足を運んだ。

 県は昨年度から企業に助産師を派遣し、妊娠に伴う女性の体と心の変化や産後の不調を学ぶ講座を開催。赤ちゃんの人形を使うなどして、育児や家事への協力を促し経営者や職場の風土を変える後押しをする。本年度は8月から11月まであり、11社が参加する。

 「その体で仕事をするのはどうですか?」。島根県助産師会の加瀬部洋子さんが9月上旬、樋野電機工業(松江市東出雲町揖屋)で開かれた講座で男性社員に問いかけた。男性は妊婦の体を模した重さ8キロのジャケットを着用。体験した松坂章宏さん(38)は「日常生活さえ苦しいと分かった。困ったことはサポートしたい」と話した。

 女性は妊娠中、つわりや眠気、むくみなど体の不快な症状に加え、胎児の成長を案じて精神的に不安定になることもある。加瀬部さんは、周囲が「まだ生まれないの?」など、焦りを感じさせるような発言もしないよう求めた。

 妊婦健診に付き添う男性が増え、健診は父親の自覚を高める好機という。職場に休暇を願い出たら快く送り出すよう助言もした。

 母親は産後も母乳の出具合や子どもの発達など、心配事が尽きない。頑張りを否定せず、安心につながる言葉で接し、育児休業から復帰後は子の急な体調不良による早退や、欠勤も珍しくないとして、職場に理解を呼びかけた。

 家庭では女性に家事などの負担が偏ると「何で私ばかり」という不満につながる。男性の育休取得促進が叫ばれ取得者は増えているが、女性に育児を任せきりにせず、わが子の成長を共有して喜び合うことが、女性を孤立させないために大切だという。

 円満な夫婦関係に役立つのは、さすが▽幸せ▽すごい▽世界一!▽そうだね-の頭文字からなる「ほめ上手のさしすせそ」の声かけだという。職場では子育て世代の応援につながるとし、加瀬部さんは「『おかげさま、おたがいさま』の意識が必要」と、ねぎらいと感謝を伝え合うよう話している。 (山口春絵)

 

▽メモ

 2022年の就業構造基本調査(総務省)によると、島根県の育児をしている女性の有業率は86・8%(全国平均73・4%)で全国3位。鳥取県は88・0%で1位だった。夫婦共働き世帯の割合は島根55・7%、鳥取54・6%で、いずれも全国の50・9%より高い。