約3年分の残業代が支払われていないとして、学校法人永島学園松江西高校(松江市上乃木3丁目)の教員10人が、法人に対し計500万円の支払いを求める訴訟を松江地裁に起こすことが24日、代理人弁護士への取材で分かった。提訴は25日を予定している。法人側は「正当な賃金を支払っている」と争う姿勢を示している。
教員の残業を巡っては、公立学校教員には教職員給与特別措置法(給特法)が適用され、基本給の4%が支給される代わりに、時間外労働に対する賃金は原則、支払われない。
給特法が適用されない私立の松江西高校は、公立に倣って基本給の4%に当たる「教員特別手当」を支払っている。一方、原告側代理人弁護士によると、特別手当以上に所定時間を超えて働いた場合は、時間外手当を支払うと定めている。
教員が求めるのは、2020年6月から23年3月までの残業代。訴状などによると、10人は部活動や生徒指導などに追われ、教員特別手当を上回る業務が生じているのに支払われていないと主張している。
4月に法人に請求したが支払われなかったため、提訴に踏み切った。正確な請求額は、法人からの書類提出を受けた上で算定するとしつつ「少なくとも50万円は下回らない」と1人一律50万円を請求する。
さらにタイムカードが未設置で、労働時間が把握されていないと指摘。法定時間外労働をさせるのに必要な「三六協定」や、繁忙期に長く働き、長期休暇で労働時間を短くする「変形労働時間制」の労使協定がそれぞれ締結されていない現状も問題視した。
永島学園の永島一雄理事長は「教員特別手当以上の残業は業務命令していないので、勤務として考えておらず、正当な賃金を支払っている」と述べた。
同校では、就職に特化した「総合学科」設置を巡り不当な懲戒処分を受けたとして、教員13人が法人に対し、処分の無効確認や計1540万円の慰謝料を求める訴訟を起こしている。このうち7人が残業代不払いの原告に名を連ねている。
(井上雅子)