秋の観光シーズンを迎えた山陰両県内で、観光客の荷物を駅などから宿泊先に配送するサービスが再開していない。新型コロナウイルスの影響で安定的な需要が見込めないことに加え、燃料代高騰や配送する運送業者の人手不足が要因。現地に降りた後に手ぶらで観光できるサービスが限られ、重い荷物が観光客の行動を制限している実態もある。
一畑トラベルサービス(松江市)は、JR出雲市駅(出雲市駅北町)や出雲空港(同市斐川町沖洲)など出雲市内6カ所で荷物を預かり、出雲、松江両市の宿泊先に1個800円で届けるサービスを中止した。
同社によると、コロナ禍前の2019年度に約6400個あった利用が感染拡大後の20年4~12月は約千個に落ち込んだ。5月の大型連休など期間限定で実施した21年は計480個と伸び悩んだため、再開していない。同社の事業担当者は「車での来訪が増えており、1日に受ける個数が増えない。ガソリン代の高騰や人手不足で料金を見直す必要がある」と説明する。
米子空港(境港市佐斐神町)も米子、松江、出雲各市などの旅館に届けるサービス(1個800~1200円)がコロナ禍以降休止が続く。同空港によると、配送業者の人手不足などが理由で再開時期は未定。JR松江駅(松江市朝日町)は21年度末でサービス(1個500円)を終え、JR西日本山陰営業部(米子市)は、コロナ禍の影響で需要回復が見込めないことを理由に挙げる。
島根県東部の観光地ではスーツケースを手に観光する人の姿も目立つ。名古屋市から友人と松江城に立ち寄った大学生の矢崎裕子さん(22)は「天守まで上がりたいがここまでにする」と話し、天守に向かう階段の下で足を止めた。
他県も同じ状況にある。伊勢神宮がある三重県伊勢市はJR伊勢市駅の隣接施設で荷物を預かり、同市と周辺2市まで1個1150円で配送するが、コロナ禍前の18年度の約1万4千個が22年度は約9300個に減った。
22年11月に150円値上げしたものの、燃料代高騰などの影響を受け、収支は厳しい。配送とは別に1個500円で手荷物を預かっており、事業担当で同市観光協会の小山直子さん(45)は「手ぶらで観光できるとあって喜ばれているが、採算を取るために、手荷物預かりをしている状況だ」と話した。 (森みずき)













