電子決済用のQRコードが置かれた地方の青果店。都市部から地方まで、デジタルサービスの急速な普及が進む=インド南部ケララ州パサナムティッタ地区
電子決済用のQRコードが置かれた地方の青果店。都市部から地方まで、デジタルサービスの急速な普及が進む=インド南部ケララ州パサナムティッタ地区
電子決済用のQRコードが置かれた地方の青果店。都市部から地方まで、デジタルサービスの急速な普及が進む=インド南部ケララ州パサナムティッタ地区

 山陰両県の企業経営者らでつくる山陰インド協会(会長・松尾倫男山陰中央新報社社長)が10月下旬、松江市と合同でインド経済視察団を派遣した。2013年から交流を重ね、新型コロナウイルス禍で中断を挟んで4年ぶりの訪問。この間、インドの人口は14億人を超え、中国を抜いて世界一となった。人口減少で市場が縮小する両県にインドの光が差し込むのか。活路を求める視察団に同行して現地の最前線を取材し、交流の向かう先を探った。(政経部・今井菜月)

 「街が明らかにきれいになった」「クラクションの音が減って静かだ。知的水準がどんどん高まっているのだろう」。10月23日、首都・ニューデリーを4年ぶりに訪れた一行。団長を務める上定昭仁松江市長らから、驚きの声が口々に漏れた。

 初議長国として今年9月に開いた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)も契機となり、都心部の様子は明らかに変わったようだ。官庁街の路上で生花店を営むアカーシュさんは「新しい時代が来た」と実感を込めた。鈴木浩駐インド日本大使は「(G20開催に)国民誰もが誇りを感じている。みんなで一流国になるぞというような活気にあふれている」と語った。

 ▼世界の企業呼び込む

 14年に発足したモディ政権の産業振興策でビジネス環境は改善されている。州ごとに異なっていた消費税などの間接税は海外企業の悩みの種だったが、全国一律になった。「メーク・イン・インディア」をスローガンにした製造業振興では、電子機器や自動車など14分野の設備投資を補助金で後押しし、世界の企業進出を呼び込む。

 人口増加に加え、政策の効果もあり、19年に2・84兆ドルだった国内総生産(GDP)は22年に3・39兆ドルに増えた。母国の経済成長をニューデリー在住の通訳者ユゲーシ・マダーンさん(59)は「自転車だった人がバイク、バイクだった人が車、車だった人が高級車に乗るようになった」と表現した。

 ▼もうかるビジネス

 デジタルの普及などで地方社会の改革も着実に進んでいる。

 中海・宍道湖・大山圏域市長会などと協定を結び、経済交流を進めていた南部ケララ州のパサナムティッタ地区。首都から2千キロ超離れた地方の小さな青果店には、電子決済サービス(Paytm)が普及し、瞬時に支払いができるようになっていた。モディ政権は16年の高額紙幣廃止以降、電子決済の普及を推し進める。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)ニューデリー事務所の鈴木隆史所長は「インド人の消費マインドを変えるきっかけになったのではないか」と推測した。

 ジェトロの22年調査によると、自動車や産業機械など日本から進出した企業の7割が黒字を計上した。「今やインドビジネスはもうかるものに変わった」と、鈴木所長も鈴木大使も口をそろえて視察団を鼓舞した。