指定薬物になったHHCHを含む「大麻グミ」
指定薬物になったHHCHを含む「大麻グミ」

 若い世代を中心に大麻汚染が広がり、深刻さを増している。政府は今国会で、大麻を麻薬取締法で規制する「麻薬」と位置付け、既に禁止している所持や譲渡などに加え、使用も禁じる大麻取締法などの改正案の成立を目指す。そんな中、各地で「大麻グミ」と呼ばれる商品を食べた人が相次いで体調不良を訴え、病院に救急搬送された。

 厚生労働省は、グミから大麻の有害成分と化学構造がよく似た合成化合物を検出。医薬品医療機器法に基づき「指定薬物」に指定した。来月2日から所持や使用、流通を禁止する。しかし、こうした指定のたびに、規制を逃れるために構造をわずかに変えた新たな化合物が次々に出てくる。

 しかもグミのほかクッキーやバター、チョコレート、たばこ―と化合物を含む商品はありとあらゆる形で提供され、大麻類似成分のことを知らず口に入れる人も多い。ただ知っていてもさして抵抗感はないようだ。大麻を巡り交流サイト(SNS)に「体に悪影響はない」「依存性がない」などと誤った情報が氾濫しているからだろう。

 乱用と健康被害の拡大に何とか歯止めをかけなくてはならない。容易ではないが、国は規制強化で先手を取る必要があろう。併せて幻覚を引き起こしたり、依存症に陥ったりするなど大麻がどれほど有害か、粘り強く若者の間に発信を重ねていくことが求められる。

 警察庁によると、2022年に大麻事件で5342人が検挙された。過去最多の21年より若干減少したが、その7割を10代と20代が占める。22年秋に単純所持で検挙された30~50代を含む911人への聞き取り調査では8割が有害性の認識はないとし、3割以上がインターネットで入手方法を知ったと答えた。

 まん延の背景に、使用に罰則がないことや、ネットで密売情報を得やすいことがある。問題は大麻の有害成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)。改正案で大麻とともに使用罪が適用されるようになるが、乱用により幻覚を見たり、うつ病になったりする。

 グミにはTHCと構造がよく似ている化合物HHCH(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)が含まれ、厚労省が指定薬物に追加した。だが安心はできない。昨年3月と今年8月にも、THC類似成分を指定薬物に加えたばかりだ。いたちごっこが続いており、類似構造をまとめて禁止する包括指定を検討している。

 それでも規制をすり抜ける新たな化合物がすぐ出てくる可能性はあり、全てを規制するのは難しいだろう。厚労省や警察などが内外の乱用情報を細大漏らさず収集して先手を打ち、販売停止を命じたり、法整備を強化したりする必要がある。

 一方、今回の法改正では大麻草から抽出したCBD(カンナビジオール)を含む医薬品を使用できるようにする。欧米ではCBDを含む難治性てんかん治療薬が既に薬事承認されている。日本では使用禁止規定があるため医療現場で使えず、患者団体などが使用を認めるよう要望していた。

 これをとらえ「日本でも大麻解禁」と悪質なうそで売り込みを図る動きも予想され、警戒を要する。大麻は特に成長期の若者の脳に影響が大きいとされ、グミなども含め、学校や家庭でも安易に手を出さないよう目配りを怠ってはならない。