ある町長が議会で「ここにいる議員の半数は勉強していない」と述べた。これ    に対し「失礼ではないか」と町議たちに発言の撤回を求められた町長は、「ここにいる半数の議員はよく勉強している」と再答弁した▼よく聞くと、発言を訂正しているようで全くしていない。話の表と裏を入れ替えたような言葉のマジックに町議たちはけむに巻かれたようで、互いに顔を見合わせた▼同じ意味でも言い回しによって印象ががらりと変わる例え話である。鳥取大でデータ分析などを研究している桑野将司教授から聞いた講義をヒントに敷衍(ふえん)してみた。桑野教授によると、この手のレトリック(表現の仕方)による罠(わな)はアンケート調査などで多用されている▼語順効果もその一つ。ビジネスなどに利用されるアンケートの質問では、後に来る文言ほど回答者の印象に強く残る。「値段は高いが、性能は良い」と説明されれば性能に、「性能はイマイチだが、値段は安い」と売り込まれると値段の方に消費者の関心は向けられる傾向があるという▼語順効果を意識してかどうか「会食はしたが、やましいことはしていない」と、総務省幹部への接待問題を巡る国会質疑で繰り返された答弁。会食の負のイメージを「やましいことはしていない」と潔白の言葉で上書きして打ち消そうとする。そんな釈明に追われる前に、「李下(りか)に冠を正さない」会食の心得を学ぶべし。(前)