2024年は、国内外ともに景気の足取りを脅かすリスクに警戒が怠れない年となりそうだ。海外では米国と中国の景気動向が鍵を握る一方で、国内では物価上昇に負けない賃上げの実現、それに応じた日銀の金融政策運営などが先行きに影響すると見込まれる。
とりわけリスクが目につくのは海外経済で、中でも世界の国内総生産(GDP)の4分の1を占める米国経済の行方に注意を払いたい。
新型コロナウイルス禍後の高インフレを受け、米国では金融引き締めを続けてきたが、昨年末までにほぼ終了。連邦準備制度理事会(FRB)の期待通りにインフレが沈静化し、米国経済を「軟着陸」させられるかどうかが焦点である。
国際通貨基金(IMF)は今年の米国を、減速しながらも実質1・5%成長と見込んだ。その背景にあるのは、物価の落ち着きに合わせてFRBが利下げへ転じ、それが実体経済や株価を下支えするシナリオだろう。
米国の利下げは円高要因ともなるが、米経済の軟着陸が貿易面で日本経済に望ましい点は言うまでもあるまい。
一方、今年も明るい展望を描きにくいのが世界第2位の経済大国、中国である。
昨年表面化した不動産不況が引き続き重荷となり、IMFは今年の中国を4・2%成長と一段の減速を見込んだ。中国では若年層の高失業などが響き個人消費も力強さを欠いており、景気低迷は長期化の恐れがある。
わが国にとって中国は最大の貿易相手国であり、その浮沈は日本経済だけでなく、周辺アジア諸国、そして世界経済に影響が及ぶ。動向から目をそらしてはなるまい。
ロシアのウクライナ侵攻やイスラエル・ガザ紛争の軍事衝突に加え、米中対立の激化で国際関係の緊張が続いている。この緊張関係が世界経済に影を落としている点を忘れてはならない。
国際関係の行方次第ではエネルギー市況やサプライチェーン(供給網)、国際物流などの動揺があり得るからだ。そのようなリスクの低減に資する日本の役割を今年は真剣に探っていきたい。
国内経済は昨年、コロナ禍が一段落したことに伴うサービス消費や、円安によるインバウンドの回復で底堅く推移した。今年はその反動が見込まれる一方で、家計には1人当たり4万円の定額減税が予定される。物価高をしのぐ賃上げの実現を含め、景気全体を左右する個人消費の力強さが焦点と言えよう。
賃上げのヤマ場である今春闘では、人手不足を背景に一部大手企業からは昨年を上回る引き上げの表明が相次ぐ。しかし、コスト増分を容易には価格転嫁できない点などから、中小をはじめ処遇改善をためらう企業は少なくない。
賃上げの水準と広がりは、物価動向とともに、日銀による金融政策の大きな決定要因となる。植田和男総裁は物価上昇と賃上げの「好循環」が確認できれば、マイナス金利政策を解除する考えを示唆している。
それだけに物価と賃金の行方は、今年の国内経済におけるハイライトとの見方ができそうだ。マイナス金利の解除で「金利のある世界」の扉が開かれれば、1千兆円超の国債残高を抱える日本の財政リスクにも、あらためて目を向けずにはいられないだろう。