完成したグロを囲む住民たち=大田市五十猛町
完成したグロを囲む住民たち=大田市五十猛町

 国の重要無形民俗文化財に指定されている大田市五十猛町の伝統行事「グロ」が11日、同町の大浦地区で始まった。漁港の脇に高さ15メートル、直径7メートルの仮屋が設置され、集まった住民が1年の無病息災や豊漁を願った。

 300年以上の伝統があるとされている「五十猛のグロ」は、「小(こ)正月(しょうがつ)」の1月15日ごろにかけて営まれる。竹やござを使ってくみ上げられた仮屋に歳徳神(としとくじん)を迎えて祈願し、15日朝に解体して燃やす。

 くみ上げる作業は午前8時前、地区の住民や地区外の漁師ら60人で開始。大竹を色とりどりの短冊やテープで飾った後、ロープをはって立ち上げ、ササ、木材やござを使って円形の仮屋を完成させた。

 仮屋を組んだのは、新型コロナウイルス禍での中断を挟んで4年ぶりだったものの、手際良く約2時間で完成させた。

 仮屋の中では期間中、住民たちが集まっていろりを囲み、餅などを焼いて食べる。代表世話人の漁師三井克浩さん(59)は「立派なグロができた。高齢化で伝統をつなぐのは大変だが、地区全体で守っていきたい」と話した。
(勝部浩文)