線香が出火原因とみられる故田中角栄元首相旧邸宅の火災現場=8日午後、東京都文京区(共同通信社ヘリから)
線香が出火原因とみられる故田中角栄元首相旧邸宅の火災現場=8日午後、東京都文京区(共同通信社ヘリから)
発光ダイオード(LED)式や短いろうそくや線香、燃えにくいマット=松江市浜乃木2丁目、お仏壇のひょうま松江店
発光ダイオード(LED)式や短いろうそくや線香、燃えにくいマット=松江市浜乃木2丁目、お仏壇のひょうま松江店
線香が出火原因とみられる故田中角栄元首相旧邸宅の火災現場=8日午後、東京都文京区(共同通信社ヘリから)
発光ダイオード(LED)式や短いろうそくや線香、燃えにくいマット=松江市浜乃木2丁目、お仏壇のひょうま松江店

 「目白御殿」と呼ばれた故田中角栄元首相の旧邸宅で起きた火災は、仏壇に供えられた線香が要因とみられ関心を呼んだ。同様の火災は山陰両県内でも発生し、住宅だけでなく、墓前の線香が林野火災に発展したケースもあった。派手に炎が上がらず、ゆっくりと燃え続けるため気付きにくい特徴があり、近年は「不燃」の線香が選ばれるなど惨事を防ごうとする動きが広がる。

 「火災が怖いといって年配の両親を説得し、火を使わない電池式の線香を買う人が増えてきた」。仏壇や墓を販売するひょうま(益田市高津7丁目)の坂崎征也営業部長は、傾向が変わってきたと口にする。

 実際、線香が原因の火災はなくならない。田中元首相の旧邸宅は、1階の仏壇に供えられた線香が火元とみられ、建物約800平方メートルなどを燃やす事態に及んだ。山陰両県の12消防本部、局によると、2019~23年の線香やろうそくが出火原因とみられる火災は少なくとも26件あった。

 松江市消防本部予防課の中井泰三課長補佐によると、火が出ず、くすぶった状態の線香が、燃えやすい座布団や紙類に接すると、周囲を焦がしながらゆっくり燃え続けるため、気付きにくいという。

 同市では20年、仏壇に供えられた線香が倒れ、敷いてあった座布団に落ちて発火。浜田市では23年、屋外の墓に供えられた線香の火が何らかの影響で枯れ草に触れ、林野火災となった。同様に、仏壇や神棚のろうそくの火が近くの紙類に燃え移る場合もあった。

 100年近く仏具を販売する松江市殿町の母里佛具店の母里健一代表は「倒れても香炉から落ちないように線香を短くする人もいる」と話す。線香は宗派によって香炉に立てるか、寝かせるかで分かれているが、個々の判断に委ねられている面もある。

 香炉の同じ箇所に立て続けると灰がたまって倒れやすくなり、定期的な灰の交換が大切になるという。

 同本部予防課の中井課長補佐は「空気が乾燥している今の時期、火の気に気を付けてほしい」と話し、仏壇や墓の周囲を整理し、線香が風で倒れないように窓を開けないことや、香炉の下に防炎マットを置く対策を呼びかけた。(黒崎真依、曽田元気)