能登半島地震の発生から2週間。この大災害は人口の減少と高齢化に直面する地域での災害対応の大変さを浮き彫りにした。強い揺れによる深刻な木造住宅の被害、道路の寸断による長引く孤立、停電や断水、通信障害、なかなか進まない避難所の生活環境の改善…。
このような災害への緊急対策、復旧・復興の司令塔は住民に最も近い市町村である。被災地に派遣した応援職員などの意見も参考に、全ての首長、職員には大災害が地元で起きたらどう対処するのかを考えてほしい。その点から自治体の役割を再認識し、防災や復旧・復興の在り方を抜本的に見直したい。
被災状況から得た第一の教訓は、住宅の耐震改修の促進だ。費用負担から自宅の補強に踏み出せない人も多い。箱型の個室「耐震シェルター」を置くような簡易な方法も活用、支援も上積みして耐震化を進めるべきだ。
第二は孤立対策の充実である。集落単位で食料や飲料水、燃料、発電機、仮設トイレなどの備蓄を増やし、井戸も掘って生活用水の確保策も急ぐべきだ。倒壊した建物からの救助や崩れた土砂を除去するため重機の配置も検討課題に挙げたい。
安全な避難所を十分に準備し、仮設住宅の設置場所も事前に決める。被災後の復興に向けた青写真も住民参加で議論することが重要だと言える。
防災以外にも地方自治の課題は山積する。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に対する政府の措置は地方に厳しい。国土交通相が昨年末、玉城デニー沖縄県知事に代わって工事の設計変更の承認を代執行し、10日に軟弱地盤がある大浦湾側の工事に着手した。
訴訟の判決、地方自治法の手続きに基づくとはいえ、県の反対を押し切った国の姿勢は地方自治の危機にも映る。外交・防衛の分野は政府の役割としても、岸田文雄首相が「丁寧な説明を続ける」と言うのであれば、対話による地元との合意を目指すべきではないか。
地方自治法が改正され国から自治体への「指示権」が拡充される予定。大規模災害や感染症危機など既存の法律で対応できない非常事態での行使が前提という。自治をないがしろにしないか、地方側の監視は当然である。
国立社会保障・人口問題研究所は昨年末、2050年までの地域別の推計人口を発表した。東京都を除く道府県で20年を下回り、市区町村の約20%は住民が半数未満に落ち込むなどと予測する。14年に安倍晋三首相が「地方創生」を提唱した後、東京一極集中の是正と人口減対策が進められてきたものの、効果がほとんどなかったと考えられる。国の対策はあてにせず、大幅減を前提に地域の生活を守るサービスや行政をどう維持するのか、自治体は自ら対策を練らなければならない。
人手不足から一つの市町村が全ての行政サービスを自前で行うのは不可能となる。周辺市町村、都道府県と役割分担して進めたい。NPOや企業も巻き込み、官民が融合して多様な仕事を担う組織を地域ごとに立ち上げ、持続可能性を高める仕組みづくりも不可欠だ。25年度末までに、業務に使う自治体の情報システムが標準化・共通化される。コスト削減、データ共有の促進が期待できる。停電やインターネット途絶といったリスクも十分に考慮してほしい。