益田市内で発生したノロウイルスによる集団食中毒は、この10年で島根県内最多の患者が出る事態に発展した。専門家はウイルスは低温や乾燥した場所でも強く、冬場に爆発的に増加するとし「手作りで作業する以上、清潔に保つ対策をしないと感染を防ぐのは難しい」と指摘する。
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厚生労働省によると、ノロウイルスによる食中毒患者は2018年に約8500人確認され、22年は約2200人だった。氷山の一角とみられ、さらに多い可能性がある。
12~1月がピークで、冬場(12~2月)が年間発生数の5割前後を占める。
ノロウイルスは汚れた手などを介して人から人へと移る。感染して24~48時間の無症状期間を経て、激しい嘔吐(おうと)や下痢などの症状が出る。予防接種や予防薬はない。
「特に冬場の手作りはリスクが伴う」との見解を示すのは帝塚山学院大人間科学部の西川禎一教授(食品微生物学)だ。夏場は細菌性食中毒が多いのに対し、冬場はノロウイルスをはじめとしたウイルス性食中毒が急増する。
ノロウイルスは熱に弱いが、のり巻きは一部の具材を除き、加熱されていないためリスクが高まる。ウイルスが手に付き、食品を介して口から体内に入るほか、飛沫(ひまつ)や空気感染の可能性もあり得る。
西川教授は「いかに清潔に準備をして食品を汚染させないかだ」と指摘。コロナと同じく予防の基本は手洗いの徹底だ。外出やトイレの後、調理や食事の前などに手洗いを励行する。また、調理者には使用している手袋を着けっぱなしにしないよう呼びかける。
(曽田元気)