生体肝移植手術から30年を記念した碑文を前にあいさつする永末直文さん=2019年11月、出雲市塩冶町、島根大医学部
生体肝移植手術から30年を記念した碑文を前にあいさつする永末直文さん=2019年11月、出雲市塩冶町、島根大医学部

 島根医科大医学部付属病院(現・島根大医学部付属病院)で1989年、国内初の生体肝移植手術を執刀した島根大名誉教授の永末直文(ながすえ・なおふみ)さんが死去したことが13日、分かった。81歳。福岡県出身。葬儀は同日執り行われた。

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 89年11月、「先天性胆道閉鎖症」の1歳男児に、父親の肝臓の一部を移植する生体肝移植を実施。男児は一般病棟に移るまで回復したが、90年8月、多臓器不全で亡くなった。

 手術は国内で肝移植が増える契機となり、一般社団法人日本肝移植学会によると、国内で2021年12月末までに1万839件(生体肝移植1万121件)実施され、年間では約400件行われている。

 島根大病院では1例目以降、肝移植は行われていないものの、再開を目指した体制構築が進められている。

 永末さんは2000~03年に島根医科大医学部付属病院長、03~05年は島根大医学部長を務めた。

 当時、病院長の永末さんを副院長として支えた元島根大学長の小林祥泰さん(77)は「患者の命を救うことにまっすぐで実直な人。地方の病院で体制が十分とは言えない中で、先駆的な医療に取り組まれた。永末先生の生体肝移植があったからこそ、その後の移植医療が進んだ」としのんだ。
(黒沢悠太、佐野卓矢)