初めて文庫本を買ったのは小学5年生の時だ。「小説を1冊読みましょう」という課題があり、近所の小さな本屋さんをのぞいてみるものの、どの本なら読めそうなのかがさっぱり分からない。仕方なく店主に「漢字の少ない本はありますか?」と尋ねると、薦められた本が北杜夫の「船乗りクプクプの冒険」だった。

 家に帰って購入した文庫本を手に取ると、なんだか大人になったようで頬が緩んだ。読んでみると...