大谷翔平選手が移籍したドジャースの本拠地ドジャースタジアム=3月28日、ロサンゼルス(共同)
大谷翔平選手が移籍したドジャースの本拠地ドジャースタジアム=3月28日、ロサンゼルス(共同)

 昨冬、大谷翔平選手の移籍先が決まった時、新たな本拠地となったドジャースタジアムの名物「ピーナツ投げ」を思い出した。袋詰めのピーナツを投げるのは売り子で、離れたところから見事「ストライク」。学生時代、貧乏旅で回った米国で体験してみたかったことの一つで、観客席で手を上げるのに勇気を振り絞った。

 30年前の1994年、初めて「1ドル=100円」を割った円高に背中を押され、異国で見聞きした経験には、その後の人生で折に触れて支えられた。米大リーグはその直後からストライキに突入。野茂英雄投手が「パイオニア」として海を渡る前年のこと。時の移ろいを感じる。

 今思えば、あの時「バブル」は既にはじけていた。その後、何度か1ドル70円台まで進んだ円高は、平成、令和をまたぐ低成長の要因の一つとされる。

 「失われた30年」。34年ぶりの日経平均株価の最高値更新、33年ぶりの高水準となった春闘の賃上げ、日銀のマイナス金利政策解除に伴う17年ぶりの利上げという、今春相次いだ歴史的なニュースで、しばしば引き合いに出た言葉だ。

 賃金も物価も上がらないのが当たり前の時代からの脱却。今がその変わり目とすれば、生活者としてはコロナ以降の物価高騰や供給制約で増しているように感じる暮らしにくさや先行き不安と、当面どう折り合いをつけていこうか。呪文のように「景気は気から」と唱えている。(吉)