望遠レンズで撮影した松江市の大手前通り
望遠レンズで撮影した松江市の大手前通り

 写真は、漢字の通り「真実を写すもの」と思っていたが、そうでもなくなってきたようだ。高性能カメラが付いたスマートフォンが普及し、誰でも簡単にきれいな写真が撮れる時代。カメラが明るさや鮮やかさを自動調整してくれるし、アプリを使えば写真加工も思いのままだ▼「盛った写真」も当たり前になった。もはや「創作画像」と呼んだ方がいいものもある。44年前、写真プリントのテレビCMで流行した「美しい人はより美しく、そうでない方はそれなりに」のフレーズが、今では妙に控えめな感じがする▼新聞写真も見たままではない場合がある。広角レンズを使って手前にある物を強調したり、望遠レンズの圧縮効果で人や花などの「密」を表現したり。目を引く写真にするためで、古典的な「盛り」かもしれない。ただ、目の前にある物、実際に起きていることを撮るという意味では、やはり真実を写すものだ▼最近、写真共有の交流サイト(SNS)で、フランス発の「ビーリアル」が広がっているそうだ。アプリで通知が届くと原則2分以内に写真を撮って投稿。写真を盛ったり、加工したりはできないが、逆に飾らない日常の様子を共有できるのが人気の理由という▼増えてきた虚飾への反動か。やはり知りたいのは偽りのない真の姿ということか。「盛る」ことが当たり前だった若者には新鮮なようだ。「それなりに」もまた面白い。(彦)