「いつの夜も月にふる雪をおもへ」という詩の一行がある。

 この言葉は、私が刊行企画した詩人・河村悟の最後の詩集『裂果と雷鳴』に収められているが、その果てしなく静かな一行を思うとき、私の心に浮かぶ「月」とは、闇夜に輝くあの天体ではなく、松江の月照寺の境内である。しかし私は、冬の松江を訪れたことがなく、し...