「ニュー・クリアー・サウンズ」
「ニュー・クリアー・サウンズ」
デビューアルバム「1977」
デビューアルバム「1977」
「ニュー・クリアー・サウンズ」
デビューアルバム「1977」

 英ロックバンド「アッシュ」がアルバム「1977」(1996年)でメジャーデビューしたとき、メンバー3人は全員10代だった。タイトルの数字は、お気に入りの映画「スター・ウォーズ」1作目の公開年と、メンバーのうち2人の生誕年を意味する。当時は「恐るべき子どもたち」と呼ばれ、米人気バンドのグリーン・デイからの前座出演依頼を「学校の試験があるから」との理由で断ったこともあるという。

 常緑樹のように、季節が変わってもみずみずしさを失わないことの例えとして「エヴァー・グリーン」という言葉がある。このバンドにこそ、その形容をささげても惜しくはない。

 ポップながら憂いを帯びたギターサウンドが特徴。最もグリーンさを感じるのはティム・ウィーラーのボーカルだ。線が細く、ギターの響きにかき消されそうになる危うさが、若さのリアルを感じさせる。こういう歌声を「弱々しい」と評価するのは間違っている。

 セカンドアルバム「ニュー・クリアー・サウンズ」(98年)の国内盤ラストを飾る「ア・ライフ・レス・オーディナリー」は、柔らかい木漏れ日が降り注ぐようなギターのイントロで始まる名曲。メンバーとほぼ同い年の自分は、この曲のような時間が永遠に続けばいいのにと、思わないではいられなかった。 (銭)