新型コロナウイルスの変異株で感染力が強い「デルタ株」の陽性者が中国地方で相次いでいる。島根県内では出ていないが、隣接する鳥取、広島両県では疑いのある感染者が複数確認された。東京五輪に伴う往来が予想される中、感染力の強い変異株への備えが求められている。 (佐々木一全)
デルタ株はインド由来の変異株。1人が何人に感染を広げるかを示す「実効再生産数」は従来型の1・95倍で、県内で見つかっている変異株の大半を占めるアルファ株(英国由来)の1・3~1・4倍とされる。国立感染症研究所によると、東京五輪が開かれる7月下旬には全体の70%がデルタ株に置き換わる可能性があるという。
6月28日時点の厚生労働省のまとめでは、15都府県で224人が感染し、隣県では広島県内で8人の陽性を確認。29日には鳥取県東部の滞在施設でデルタ株疑いのクラスター(感染者集団)が発生した。
ワクチンの効果が、接種回数で異なる点もデルタ株の特徴だ。
山陰両県内で採用されているファイザー製のワクチンは、1回目の接種で4割の人に十分な中和抗体が作られ、2回目の接種後は9割に上ったとの研究結果がある。島根県内では6月27日時点で医療従事者を除いて約14万人が接種を受けているものの、2回目の接種を完了したのは6万人にとどまる。
県内の今年4~6月の感染者数は265人で、わずか3カ月間で3月までの1年間の確認数と同水準となった。県はアルファ株の拡大が理由とみており、さらに感染力の強いデルタ株の流入に向けた警戒を強める。県感染症対策室の田原研司室長は「デルタ株に置き換わるスピードを注視する必要がある。早期発見で封じ込めができるよう初確認に備える」と話している。