衆院政治改革特別委の理事懇談会に臨む与野党の理事ら=21日午前
衆院政治改革特別委の理事懇談会に臨む与野党の理事ら=21日午前

 「政治とカネ」を巡って、これほどまでの不信を招いたのは誰か。自民党にその自覚があれば、再発防止の法整備では、自らの案のごり押しは許されず、他党の主張に耳を傾け、受け入れる謙虚な姿勢が不可欠だ。

 自民党安倍派の巨額の裏金事件などを受けて、各党が提出した政治資金規正法改正案などがきょう、衆院政治改革特別委員会で審議入りする。

 自民は公明党との調整が付かず、単独で改正案を提出した。裏金事件の表面化から半年が経過しながら、岸田文雄首相はじめ自民の対応は、判断が甘く、遅いと言わざるを得ない。

 終盤国会の最重要法案にもかかわらず、与党案をまとめられなかったのは極めて異例で、自民は孤立していると認識すべきだろう。

 自民案は抜本改革にはほど遠く、その場しのぎの抜け道を温存する中途半端な中身だ。公明との対立点となった政治資金パーティーの公開基準は、現行の「20万円超」から「10万円超」に引き下げたものの、一般の寄付と同じ「5万円超」とすることを拒んだ。

 企業・団体献金の受け皿とされ、裏金づくりの温床になった実態を踏まえれば、「政治活動の自由」を振りかざしても説得力を持たない。立憲民主党が打ち出すパーティーの全面禁止、ないしは日本維新の会が掲げる企業などの購入禁止に踏み込むべきではないのか。

 自民で執行部ら議員個人に年間10億円前後支給されてきた政策活動費の透明性確保も全く不十分だ。受け取った議員が「組織活動費」「選挙関係費」といった大まかな支出項目を党本部に報告し、党の政治資金収支報告書に記載するというが、その先は検証できない。立民の野田佳彦元首相が、大きなブラックボックスを小さなブラックボックスにしただけ、と批判するのも当然だ。

 立民などは精算不要な渡し切りの経費支出を禁じるように主張。維新は年間の支出総額に上限を設け、使途を限り、収支報告書と別に「特定支出報告書」を作成、10年後に公表する制度を提案している。

 平成の政治改革では、国民の税金から政党に交付する助成制度が導入された。その精神を踏まえれば、禁止を含め企業・団体献金の取り扱いを真摯(しんし)に検討する機会でもある。

 政治家がさまざまな政治団体を持ち、カネを出し入れしていることも、政治資金の流れを不透明にしており、こうした点の骨太の改革論議も求められている。

 忘れてはならないのは、裏金事件の真相解明だ。おざなりの党内調査で処分を決めても、国民は納得していない。衆参両院の政治倫理審査会も、裏金を受領した議員計73人を審査対象として議決しながら、全員が欠席の意向というのでは、疑念にふたをしたままである。特別委では政治資金規正法改正案の審議と並行して、関係者の国会招致などを通じて、事件の全容に迫る必要があり、国会の会期延長も選択肢になろう。

 参院で自民は単独過半数を占めておらず、自党の案を数の力で成立させられない。野党も公明党も抜本改革と呼べる内容にならない限り、安易な妥協を慎むべきだ。裏金事件の「反省」を示すためにも、岸田首相ら自民執行部は、他党案を取り込む決断をしてもらいたい。それが信頼回復の第一歩である。