島根県原爆被爆者協議会(原美男会長)が、700人近い県内全ての被爆者から被爆体験や原爆の実態を語り継ぐメッセージを募っている。被爆者が年々亡くなり、地域ごとの被爆者団体も解散が相次ぐ中、記憶の継承に力を入れる。寄せられたメッセージはパネル展示を想定している。 (佐貫公哉)
被爆体験の忘却は広島、長崎への原爆投下から75年余りたった今、喫緊の課題になっている。協議会の堂前直行事務局長(69)は「時間がたつほど被爆者が亡くなり、記憶も失われる」と憂う。
県によると、県内の被爆者は3月31日時点で680人。平均年齢は約89歳と全国で最も高い。近年では毎年70~80人亡くなるという。存命者でも高齢化や病気により語り部といった活動が難しくなっている。
地域ごとの被爆者団体もピーク時は15団体ほどあったが、この10年間で松江市、安来市、隠岐の島町、益田市、浜田市の5団体が解散し、現在は出雲、雲南両市の2団体しかない。
被爆者全てにメッセージを募る試みは、県内ではこれまでないという。多くの被爆者に協力してもらいやすいよう、文章に限らず絵や図、写真、家族による口述筆記も受け付ける。
募集期間は2022年12月まで。集まったメッセージは展示パネルにまとめ、協議会が毎年8月6日ごろに開く原爆に関するパネル展に展示し、広く世間の目に触れるよう期待する。
事業は県被爆二世の会も協力。二世の会が18年から年1回発行し、会員や被爆者らに配る会報誌「語り継ごう 未来へ」でも告知した。松浦広昭会長(72)は「親の思いを残すなら今しかない」と話す。
送付や問い合わせは堂前事務局長、〒690-0049、松江市袖師町2の50の901。電話・ファクス0852(32)0600。メールはdomae-07jan@mx.canvas.ne.jp