梅雨前線による記録的な大雨で市街地との間を結ぶ唯一の県道が崩落し、全面通行止めとなっている出雲市大社町日御碕地区では、一夜明けた10日も孤立状態が続いた。同地区には235世帯548人が暮らしている。道路復旧のめどは現時点で立っておらず、相当の時間がかかると見込まれている。
出雲日御碕灯台がある観光地の同地区には、発生時に宿泊者65人や宿泊施設の従業員21人が滞在しており、この日、ほぼ全員が船などで避難した。
島根県は10日、出雲市に災害救助法を適用すると発表した。同法に基づき、避難所設置や食料配布などの費用を国と県が負担する。県は災害対策本部会議を開き、丸山達也知事は「仮対応と本格復旧の両面の対応を迅速に行う」と述べた。
崩落現場の道路は路面が数十メートルにわたって崩落し、海に向かって土砂が流されている。
出雲市などによると、私有地を通り、歩いて崩落現場を迂回(うかい)する道はあるが、車の通行はできない。電気やガス、水道、電話回線は被害を受けていない。市は地元住民と協議し、物資の搬入などを検討している。地区内にとどまり、孤立している住民の正確な数は把握できていない。
この日、国土交通省の小型船舶が地区内にある宇龍港に寄港し、宿泊者ら11人を大社港に運んだ。残りの宿泊者、宿泊施設の従業員ら74人も私有地を通って避難した。残る1人は継続滞在を希望しているという。
県立中央病院と島根大医学部の災害派遣医療チーム(DMAT)が、医療状況把握のため現地に入った。人工透析が必要な患者はドクターヘリで搬送した。
出雲市では床上浸水が4件、床下浸水が11件確認された。道路が冠水した市街地の水は10日午前までにほぼ引いた。松江市では床上浸水が2件、床下浸水が11件確認された。
土砂災害の恐れが強まっているとして10日夕、出雲市は5568世帯の1万4820人に、雲南市は4472世帯の1万2152人に、安来市は1万4267世帯の3万5625人にそれぞれ避難指示を出した。
11日は前線が中国地方を南下し、夕方にかけて大雨になる見込み。午後6時までの24時間降水量は島根、鳥取の多い所で100~150ミリと予想されている。
JR西日本は11日、特急やくもの全区間や山陰線の米子-益田間などで始発から運転を見合わせる。(小引久実)