9日の大雨で道路が崩落して孤立する出雲市大社町の日御碕地区で、介護や通院の継続が課題に浮上している。地区人口の1割余りの60人が、要支援、要介護者。地区内に介護施設はなく、市街地の施設を利用しようにも、崩落現場の迂回(うかい)路は坂道で、要介護者には通行が難しい。当事者は、負担と不安を感じている。
午後から晴れ間がのぞいた12日。同市大社町日御碕の自宅で夫を介護する70代女性が「お風呂に入(い)れられないのが一番困る。4、5日は我慢できるが長引くと耐えられない」と吐露した。同居する息子は道路の崩落後、市街地側からまだ帰宅できていない。
夫は脳の病気で体のバランスを取るのが難しく、一人で入浴できないため、市街地にあるデイサービスを週3回、5泊分のショートステイを月1回利用していた。
道路の崩落で施設からの送迎ができなくなりキャンセルに。代わりに妻が四六時中、面倒を見るが、腕が痛く入浴介助ができず、体を拭くので精いっぱいだという。「手に負えない」とこぼす。
同市大社町宇龍の日御碕コミュニティセンターに近い木村槙江さん(89)は数年前に腰の骨を折り、週3回、訪問リハビリテーションと訪問介護の入浴介助を受けている。
普段は足腰中心のマッサージを受け、介助で湯船に漬かっている。今は、独力でリハビリをしたり、シャワーを浴びたりするしかない。「せっかく体が動くようになってきた。長引くとまた元通りになってしまう」と感じている。別の持病を抱えるものの通院も当分はできそうになく、市を通じて届けられる薬が頼りだ。
市や利用者を抱える介護施設は対策に乗り出し、施設からは、ケアマネジャーらが連絡を取り、状況の把握に努める。
サービスを提供したいのはやまやまだが、約200メートルある坂道の迂回路は、介助が必要な高齢者には通れるような状況ではないという。施設から日御碕地区へ訪れる場合は、迂回路を越えた先から集落まで約4キロ離れているのが難点で、交通手段の確保にめどが立っていない。
通所介護、訪問看護合わせて日御碕地区から10人が利用するいなさ園(出雲市大社町杵築西)の手銭宣裕施設長は「仮設の道路ができれば良いが、それまでどうするかは手探りの状態だ」と表情を曇らせた。
(小引久実、黒沢悠太)