松江市出身の落語家・立川幸之進(たてかわ・こうのしん)(本名・石飛優介)は2004年に落語立川流の立川談幸(だんこう)に入門した。談幸に師事した理由がある。

 東京都内であった立川流落語会。その日の目玉は、トリで出演する当時売り出し中の立川談春だった。しかし複数の出演者が入れ代わり立ち代わりする会の進行は、遅れていた。終演時間を考えると、お目当ての談春の時間がなくなるのではないか、客席も気をもみ始めた。

 そこへ高座に上がったのが談幸だった。見事に客席を沸かせ、場を温めた。しかも、わずか5分で話を終え、後につないだ。確かな話芸と、役割を果たす献身的な姿にしびれた。

きっかけは立川談志

 幸之進が落語に出合い談幸の玄人好みの芸風に魅力を感じたのは、自身の生い立ちと、長くお笑いに親しんだのと関係がある。

 生まれたのは現在の益田市匹見町。まだ合併前で匹見町だった。父親が警察官で転勤が多く旧広瀬町、旧瑞穂町、旧美保関町と島根県内を転々とした。

 友人との出会いと別れが繰り返されるとともに肌に合う町と合わない町が出てくる。中学時代にお笑いを楽しむようになったころは合わない町に住んでいた。...