「もう少しすると、水俣病事件は年表の項目の一つになって、若い人は何が起こったか分からなくなる。勉強した人は知識を得るかもしれないけど、分かったと思った途端に探求しなくなる。そういうものになっていこうとする、この終わりのない出来事を、どうやったら語り継いでいくことができますか」

 批評家の若松英輔さんの問い掛けに、作家の石牟礼道子さんは生前、言葉を探った後にこう答えたという。「手仕事です。手を動かしていれば間違いない。...