山陰中央新報社の石見政経懇話会、石西政経懇話会の定例会が7、8の両日、浜田、益田両市であり、新事業・地方創生の研究と人材育成を行う事業構想大学院大学の田中里沙学長(58)が「ブランド価値の向上と人材育成」と題して講演した。要旨は次の通り。
企業の課題は顧客の開発と人材の採用、育成に尽きる。現代は社会が激変し、企業と社会の関係性がより重視されている。失敗を恐れずに変化を受け入れ、挑戦していくことが大切だ。
ブランドとは顧客の期待に対し、企業が価値の提供を約束すること。ブランドが付くことで高く売れたり、顧客が親和性を感じてくれたりする。ブランド化に取り組むブランディング活動は企業価値をより広く理解してもらうことを指す。収益増や新たな顧客の開発、維持にもつながるため重要だ。
ブランドは会社の理念(ミッション)、歴史(DNA)、未来構想(ビジョン)で構成される。理念だけを明確化する会社もあるが、伝統と信頼ある会社が未来に向けて何かをやろうとする姿に多くの人は期待し、物、金、人の経営資源が集まる。未来の姿をもっと打ち出していこう。
ブランドづくりは、あるべき姿を規定して形にし、それを社会に浸透させること。個性や特異性、優位性といった会社の核を開発し、コミュニケーションで伝えることがポイント。社外と同じくらい社内にも発信することが大切で、身近な社員にこそ誤解ないように伝える必要がある。
ブランドづくりや情報発信をすることと、社内の人材育成を別々にやるのはもったいない。事業活動やプロジェクトを通じた社員の成長を重視したい。国内人口が減少する中で、生産性を上げるには社員のスキルやマインドを上げるしかない。「いい会社にいるね」などと社外の人に褒めてもらう機会を持つことが重要になる。(中村成美)