自民党の石破茂元幹事長(衆院鳥取1区)が9月の党総裁選への出馬を表明した。担当記者として5度目の挑戦となる石破氏の言動を追う中、表明時期とともに記者団が毎日のように質問したのが表明場所だった▼石破氏の言葉は揺らいだ。18日までは地元・鳥取での表明に強い意欲を示していたものの、翌19日は「地元に最初に伝え、会見は東京でやる可能性はある」と修正。周囲によると、石破氏に東京で表明してほしいとの声も届いていたという▼結果、石破氏本人がこだわり、鳥取県知事や自治相を務めた父・二朗氏の実家近くにある八頭町の和多理神社を選択。自身が小学生時代のにぎやかだった夏祭りのエピソードを披露し「もう一度、にぎやかな日本を取り戻す」と訴えた。地方を重視する思いがにじんだ▼言葉が揺らぎ「ぶれ」に映ることは過去の総裁選でもあった。2018年は出馬会見で打ち出したキャッチフレーズの「正直、公正」が、支持を受ける参院竹下派(当時)などから反発され、対応が二転三転した。今後も党内などからさまざまな声が出ることも予想され、政策発表の場で整合性が問われることもあるだろう▼和多理神社を選んだ理由はもう一つあった。「政治家になった原点に返りたい。党ではなく、国民を見る」。出馬表明での強い覚悟を総裁選で示し続け、地方重視や政治への信頼回復の道筋はぶれずに訴えてほしい。(吏)