実家の縁側の向こうでゴーヤーのグリーンカーテンが風に揺れている。今年は酷暑のせいか育ちが悪い。とはいえ少しずつでも伸びるつるに、思い出す詩がある▼植物の成長がつづられた『かぼちゃのつるが』(原田直友作)。小学校の国語で習った。<かぼちゃのつるが はい上がりはい上がり 葉をひろげ葉をひろげ…>。言葉の反復が印象的で主語が「かぼちゃのつる」から<細い先は竹をしっかりにぎって><小さなその先たんはいっせいに 赤子のような手を開いて ああ今空をつかもうとしている>とズームアップされるのも、より力強さを感じさせる▼習った当時はそこまでの印象がなかったが、進級の際に担任が文集で引用し、「はい上がり葉を広げる姿は今の君たち。つらい時はじっと耐え、大きく伸びて、大きな人間になってほしい」としたためた一文を、学生時代は座右に置いた。無限大の可能性を信じてくれる存在が支えになった▼島根県内の小中学校は早いところできのう、2学期が始まった。厚生労働省の調査によると、4月や8、9月は自ら命を絶つ10代が多くなる。学校再開に関連があることは明らかで、命を守る対策に全力を注ぎたい▼専門家によると、自分の主張を押し付けて子どもたちを変えようとせず、不安な気持ちに寄り添うことが大事だという。何かをつかもうとしている子どもの手を引っ込めさせてはならない。(衣)