ボクシングの6階級で世界を制したマニー・パッキャオ(45)は、かつて世界戦のわずか2週間前に挑戦者になった。本来の挑戦者が故障したため。試合はTKO勝ちし、後にスターになった。逆に2021年の世界戦は11日前に相手が代わった影響か判定負けし、引退表明した。つまり代役で勝ち、代役に負けた▼突然相手が代わると時間不足はお互いさまでも、代役は富と名声を手にする好機なので士気が上がる。挑まれる側は代役が本来の相手より実力、人気に劣るとあっては得が少ない。何より本来の相手用に練った戦術が代役に有効でないなら肩透かしを食った格好だ▼11月の米大統領選は、高齢不安で退いたバイデン大統領(81)の後継で、ハリス副大統領(59)が民主党候補になると勢いに乗り、再び接戦模様。共和党候補のトランプ前大統領(78)が相手変更に苦慮する▼バイデン氏に「衰弱した老いぼれ」と罵詈(ばり)雑言を浴びせるなど過激路線を展開してきたが、ハリス氏には当てはまらず、下手をすれば言葉が自分に刺さる。年長者の大人の態度として、個人攻撃がクリーンヒットになるかは定かではなく、頭が痛かろう▼一方のハリス氏は少なくとも、トランプ氏のやり方や痛いところはよく知る。大統領選は時期的に最終盤といえるが、異例の超短期決戦となった。両氏は10日の討論会で顔を合わせる。どんなジャブの応酬で始まるのだろうか。(板)