12日の告示を前に、自民党総裁選の出馬表明や政策発表のラッシュを迎えている。各候補の会見に出向いて政治信条や政策を取材する中、何度も聞いたのが「刷新感ではない。刷新だ」という言葉だ▼地元・鳥取で表明した石破茂元幹事長(衆院鳥取1区)に加え、林芳正官房長官も言及。きょう告示される立憲民主党代表選に立候補する野田佳彦元首相も同じ趣旨の文言を並べた。ベテランや重鎮が選んで使うのは、報道各社の「ポスト岸田」を問う世論調査で人気の高い小泉進次郎元環境相を意識しているからだろう▼その小泉氏がきのう、出馬表明した。街頭演説で真っすぐに語りかける印象が強い小泉氏が、会見でやや視線を落とし、メモを見ながら話す回数が多いように見えた。それだけ準備し、慎重さも備えて臨んだのか▼1時間の会見では「刷新感」や「刷新」の言葉はなく、代わりに際立ったのが「皆さん、力をください」だった。経験不足を指摘される43歳が、国会議員や党員、国民の力を借りながら、改革を前に進めようとするイメージ戦略が透ける▼小泉氏は政治改革や規制改革、人生の選択肢の拡大を今後1年以内に実現すると強調した。方向性は正しいのか。実効性はあるのか。27日の投開票までの間、他の候補と大いに議論してほしい。批判合戦ではなく、裏金事件の反省と教訓を踏まえた前向きな政策論争を誰もが期待している。(吏)