全国高校野球選手権鳥取大会の出場を巡る鳥取県高校野球連盟の対応は、全国的に波紋を広げた。島根県の高校野球関係者の間では、大会運営の難しさを挙げて出場辞退に至った経緯に理解を示す声と、「規約通りとは冷たすぎる」と批判的な声が交錯した。
新型コロナウイルス禍での大会運営は各高野連によって対応が異なる。
島根県高野連の大会申し合わせによると、大会中に参加校で感染者や濃厚接触者が判明した場合、人数や行動履歴、保健所の指示を踏まえ校長が可否を判断。日程の変更で出場可能な場合は、同一の回戦の日程内を原則に、役員会で検討することがあるとしている。
県高野連の萬治正専務理事は、他校の不利益なども考慮する必要があり、日程調整は容易でないと説明。「3年間頑張ってきた選手の出場を妨げようと思う人はいないが、全体を考え、苦しい判断をしなければならないケースもある」と、運営側の難しい立場を代弁する。
福井県では、部員数人が感染したとして、強豪校の福井商が今夏の福井大会への出場を辞退したケースがある。鳥取県の場合、部内で感染者はいなかったが、規定に基づく形で一時、出場辞退となった。
「大会復帰は本当によかった。ただ、運営側の大人は、考え直すべきだ」と話すのは、開星高を春夏計9度の甲子園出場に導いた野々村直通監督(69)。「『規定通り』はあまりに冷淡で、人生を野球に懸ける選手の存在が理解されていない。いかに試合ができるか、という発想がなかったか。これが誰のための大会なのか『選手ファースト』に立ち返るべきだ」とくぎを刺した。
(取材班)