短歌・宮里勝子選

わが生家夏草茂り風そよぐ子どもの私はもう見つからず      安 来 木島めぐみ

  【評】夏草の茂る生家の跡に立ち過ぎ去った過去を思い浮かべる。もう帰らないと言えばありきたりになるが、見つからずと言い切ったところが手柄。結句の七音が生きている。

「先に逝く天の川にて待ってるぞ」母への父の洒落た遺言     奥出雲 小川寒四郎

  【評】なんて洒落(しゃれ)た父上。永遠の別れとは思わせない愛情と心もちが粋である。何げないスケッチのようであたたかい家族の過...