島根、鳥取両県民が山陰の宿泊・観光施設を利用する際に割引を受けられる「WeLove山陰キャンペーン」の鳥取県内での新規予約停止を受け、両県の宿泊事業者は一様に落胆した。新型コロナ禍で苦戦する観光需要を下支えし、夏休みの書き入れ時での利用を期待した矢先だっただけに、先行きを懸念した。 (取材班)
政府の観光支援事業「Go To トラベル」の再開が見通せない中、両県民の近隣観光の需要を喚起してきた。
皆生温泉の皆生菊乃家(米子市皆生温泉4丁目)は恩恵を受け、7月の予約はコロナ前の約9割の水準まで回復。一転、両県からの利用が望めなくなり、柴野憲史社長は「コロナが広がり、県内、県外ともPRが難しい。対策の取りようがない」と肩を落とした。
島根県内の宿泊施設にとっては鳥取県からの集客の呼び水で、美肌の湯として知られる美又温泉の金城観光ホテル(浜田市金城町追原)は従来少なかった鳥取側の利用者が増えつつあったという。
佐々木健久社長は当面、島根県民の利用で苦境をしのぐ構えだが、感染状況次第で全面中止となるため「鳥取だけでなく島根も停止となれば厳しい」と気をもんだ。
鳥取県内での一時停止は新型コロナの感染状況が深刻になった表れで、両県内の旅行需要が冷え込む恐れがある。
玉造温泉の「出雲神々縁結びの宿 紺家」(松江市玉湯町玉造)によると、現時点でキャンセルが発生していないものの、糸川沙絵里予約課長は客のマインド低下を警戒。「夏休み期間の稼働に影響が出そう」と話し、感染が落ち着いた段階での停止解除だけでなく、8月末を期限とするキャンペーンの延長を求めた。