椎山から七尾城跡がある七尾山を眺望する人たち=益田市東町(資料)
椎山から七尾城跡がある七尾山を眺望する人たち=益田市東町(資料)

 小学生の時、写生大会でここから見下ろす町並みを画用紙いっぱいに描いた。高校生の時、グラウンドが使えない雨の日の部活で山の中腹まで続く長い石段を何度も駆け上がった。中世に益田を治めた領主益田氏が城を構えた七尾山(七尾城)は、親しみと思い出のある場所だ。

 この山を舞台に「全国山城サミット」がきょう、開幕する。いい機会だからと先日、久々に登った山は随分ときれいに整備されていた。全国から集う山城ファンを迎え入れるため、きっと大勢の地域住民が汗を流したのだろう。その日も落ち葉を掃いたり、木の枝を切ったりする人たちがいた。山道で擦れ違い際に交わすあいさつが心地よい。

 先頭を歩いて案内してくれたのは、益田市観光協会の柴田健治さん(39)。礎石建物や庭園跡、出土遺物について説明を聞けば、華やかな居城生活に想像が膨らむ。片や斜面に連続した竪堀(たてぼり)の遺構などは軍事的緊張感が漂う防御の城の一面を見せるからまた面白い。

 益田平野を一望する本丸からの景色に浸っていると、「城の正面は実はこの向きではなくて北側だったと考えられています」と柴田さんが教えてくれた。その深い谷筋の向こうにどんな眺めがあったのだろうと、興味をそそられる。

 住み慣れたいつものまちも見る角度を少し変えれば、新しい発見があるかもしれない。地域の魅力を見つめ直し、誇りを育む2日間の狼煙(のろし)が上がる。(史)