プロ野球ドラフト会議で、選手との交渉権を獲得するためのくじ引きをする球団関係者=10月24日、東京都内のホテル
プロ野球ドラフト会議で、選手との交渉権を獲得するためのくじ引きをする球団関係者=10月24日、東京都内のホテル

 知らず知らずのうちに支配されていることがある。親子、夫婦、恋人など身近な間柄でも起こりがちで、独占欲が高まりDVやストーカー、虐待に結び付くケースが多い。

 誰だって支配されたくはないと思うが、「支配の下」にいるのを望む業界がある。日本のプロ野球である。球団は、日本野球機構(NPB)が定めた統一書に基づく契約を結んだ選手を「支配下選手」として登録する。

 1球団70人が上限で、1軍の試合に出場できる資格があるのは支配下選手だけ。このほか、本来は若手の発掘を目的に設けられた「育成選手」制度もある。ドラフト会議の育成枠で指名された選手が「早く支配下に入りたい」と意気込む姿は、おなじみの光景だ。

 そもそも支配下選手という言葉は、プロ野球界独自のもの。選手が球団との契約下にあるという意味合いだが、恐らく1951年に発効された野球協約でできた言葉だろう。協約は米大リーグの規約を参考にしたとされ、文章を練る過程で意訳したのではないか。ちなみに大リーグの支配下登録枠は名簿を意味する「ロースター」という。

 それにしても、目を輝かせて支配下入りを希望する若者と、その言葉が持つ印象とのギャップに違和感を覚えるのは私だけか。きょう11月17日は、59年前に東京都内で第1回ドラフト会議が開かれた日。そんな記念日に、言葉の言い換えができないものか、と勝手に思う。(衣)