51年間のわが人生を振り返ると、学校や仕事に行きたくないと思ったことが何度かあった。理由は一つではない。当時はつらくて仕方なかったが、その時があったから今の自分があると思う▼昨年度、全国で不登校の小中学生が34万人超、いじめも小中高生で73万件に上り、ともに過去最多となった。当方が子どもの頃と違うのはインターネットや交流サイト(SNS)という「世界」があること。情報があふれ、攻撃されることもある。今の時代を生きるのは大変。怒られるかもしれないが、かわいそうだとも思う▼家でも学校でもなく、安心できる居場所が欲しい。そう考えている子どもや若者は、国の調査で7割に上る。コロナ禍の2年前、新聞社が運営する子ども食堂の「店長」を務めた。ある少年が言ってくれた。「ここなら来ることができます」。調理や受付係、子どもたちと一緒に遊び、宿題もする。頼もしかった▼子ども食堂に携わり感じたのは「つながり」の大切さ。都会に比べて地域に残っているのが強みだ。幅広い年代の人が集う「第三の居場所づくり」に自治体も力を入れてほしい。ひいては最大の課題である人口減少に歯止めをかけることにつながるはずだ▼いい時もあれば、悪い時もある。回り道したっていい。「人生はのこぎりの刃のようなもの」。苦しかった時、叱咤激励してくれた先輩からかけられた言葉を思い出している。(添)