兵庫県知事選で再選を決め、選挙事務所から引き揚げる斎藤元彦氏(中央)=17日夜、神戸市
兵庫県知事選で再選を決め、選挙事務所から引き揚げる斎藤元彦氏(中央)=17日夜、神戸市

 まるで阪神タイガースの優勝決定時を見るような盛り上がりだった。兵庫県知事選で前知事の斎藤元彦氏(47)が再選を果たした17日夜。神戸市の事務所前には数百人の支援者があふれ、熱狂的な「斎藤」コールが響いた▼にわかには信じられなかった。パワハラ疑惑などの告発文書を巡る問題で県議会から全会一致で不信任決議を受けたのが2カ月前。自動失職し出直し選に挑んだが、メディアの多くは斎藤氏に批判的な報道に終始。「もう終わった人」という見立てが支配的だった▼孤立無援の中、劣勢をはね返したのが交流サイト(SNS)を駆使した選挙戦。支援者が流したとみられる「パワハラは捏造(ねつぞう)された」「(斎藤氏は)既得権益層と戦った改革者で、むしろ被害者」といった意見が拡散。これを基に投票した人も多く、逆転勝利につながった▼甲子園で熱狂する「虎党」に似た有権者の熱量の高さと同時に危うさも感じる。そもそもSNS上の情報は、顕著な根拠がない不確かなものもある。今回の選挙で落選した元尼崎市長の稲村和美氏(52)も、SNSのデマ対応に苦慮したという▼当選確実の速報を受け、斎藤氏は湧き起こる歓声と拍手の中で「何が真実か、県民一人一人が判断してくれた」と感謝した。だが問題の解明は現在進行中。きのうも県議会の調査特別委員会(百条委員会)が開かれた。選挙結果はどうあれ、問題の真実が知りたい。(健)