自動販売機の上部の透明なガラスボトルの中で噴水のように上がるオレンジジュース。硬貨を入れると、そのジュースがカップに勢いよく注がれる。「街のオアシス」と名付けられた国内初のジュースの自動販売機はかつて全国で一世を風靡(ふうび)した。開発したのは雲南市木次町出身で、フードサービス機器大手ホシザキ(本社・愛知県豊明市)の創業者、坂本薫俊(しげとし)(1910~2003年)。戦後の激動期に起業し、革新的な製品開発で世界的な企業となった。その原動力にはフロンティア・スピリット(開拓者精神)があった。(白築昂)

 

ホシザキ創業者の坂本薫俊氏

 「10円を入れると、ジュースが一杯出てくるような仕掛けにできないか?」  1957年、名古屋市であった地元経済団体の会合。自社開発の冷水機にジュースを入れた試作品を持ち込んでPRした坂本に、オリエンタル中村百貨店(現名古屋三越)の松居修造社長が声をかけ、地域の一大イベント・名古屋祭りへの出展を打診した。  坂本と社員は与えられた10日間の猶予期間に、不眠不休で「前例のない製品」の開発をやり遂げた。イベントは大盛況。日本初のジュース自販機が...