この人は一体どんな気持ちで新年を迎えたのだろう。韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領。野党の攻勢で政治が停滞しているのを理由に非常戒厳を一時宣言して1カ月。弾劾訴追され職務停止中で、拘束を巡り緊張が走る。めでたいなんて気分にはなるまい。
尹政権は「戦後最悪」といわれるまで冷え込んだ日韓関係の修復を進め、懸案の元徴用工訴訟問題で韓国側が賠償金を肩代わりする解決策を発表。首脳のシャトル外交を復活させ、国民の往来活発化にもつなげた。山陰でも米子空港のソウル便が復活。日本側からすると“功労者”と言える。
ただずっと疑問に思っていた。なぜ「日本びいき」なのかと。尹氏は父親が一橋大に留学し客員教授も務めており、日本との縁はある。2021年に検事総長を辞して政界へ転じる前は度々、休暇で訪日していたという。
親日家の大統領で思い出すのが李明博(イミョンバク)氏。大阪生まれで日本との関係を重視していたが、任期満了が近づき政権がレームダック(死に体)化すると、求心力維持のため、竹島上陸を決行した。尹氏が二の舞いにならないかと心配していたが、それ以前に“退場”しそうな気配だ。
今年は日韓国交正常化から60年、島根県の「竹島の日」条例制定から20年の節目を迎える。本来なら官民含めた交流を活発化し、竹島問題解決の足掛かりにしたいところだが、一転して視界不良に陥った。日韓関係は「波高し」か。(健)