多鯰ケ池の近くに設置した木道と整備を進める飼牛明座長=鳥取市福部町湯山
多鯰ケ池の近くに設置した木道と整備を進める飼牛明座長=鳥取市福部町湯山
多鯰ケ池の近くに設置した木道と整備を進める飼牛明座長=鳥取市福部町湯山

 山陰屈指の観光スポット・鳥取砂丘の南東にある多鯰ケ池(たねがいけ)(鳥取市福部町湯山)に、にぎわいを呼び戻そうと地元住民グループが散策道整備やイベント開催に汗を流す。今春には官民でつくる鳥取砂丘未来会議の多鯰ケ池周辺整備基本構想にも組み込まれ、取り組みが加速しそうだ。 (岸本久瑠人)

 鳥取市街から県道265号(旧国道9号)を通り、砂丘トンネルを抜けると、左手に砂丘があり、右手に見える池が多鯰ケ池。面積230平方メートル。水深17・3メートルで中国地方の池では最も深いとされる。

 「かつては砂丘より訪れる人が多かった」。未来会議多鯰ケ池ワーキンググループ座長の飼牛明さん(73)=鳥取市福部町湯山=は回顧する。

 鳥取砂丘はかつて多鯰ケ池周辺まで砂丘が広がっていた。市街地から砂丘に行くには池の東側を走る旧道を使い、池は観光客でにぎわった。手こぎボートが40艘(そう)近くあるほどの盛況だったという。

 砂丘と多鯰ケ池を分断する県道265号は、鳥取県に昭和天皇を招き第16回全国植樹祭が開かれた1965年に開通した。砂丘へのアクセスが良くなる半面、池に立ち寄る客は激減。管理が行き届かず、池周辺には雑木が生い茂り、県道から池が見えにくくなり、池の存在感は薄れていった。

 転機は多鯰ケ池を含む山陰海岸が世界ジオパークに認定されたこと。飼牛さんら住民有志が池の利活用を目指す任意団体を2016年に結成。20年には県道265号沿いの雑木を伐採するなど景観の保全活動を進めてきた。

 県や市の財政支援も得て、公衆トイレやウッドデッキも整備。カヌーや、水面に浮かべたボードの上でヨガをする「サップヨガ」、手作りいかだのレースといったイベントも開かれるようになった。

 構想では池のそばに屋根付きの休憩所を建て、桜の植樹などを行う。第1弾として、6月に池の近くを散策するための木道を60メートルにわたり設置した。今後、300メートルまで延ばすという。

 飼牛さんは「観光客以外にも子どもたちの遠足や家族、市民に楽しんでもらえるようにしたい」と意気込んだ。