生活保護受給者が食料支援事業のフードバンクを利用した場合、山陰両県12市のうち出雲、鳥取の2市が収入と認定し、生活保護費を減らしていることが山陰中央新報社の取材で分かった。厚生労働省はフードバンク利用での保護費減額は原則しないとの考え。国とは異なる判断で、自治体裁量の範囲内の対応かどうかが問われそうだ。

 2024年9月末時点の生活保護受給者が2687人いる鳥取市は、市営のフードバンクを2回以上使った場合に減らしている。急な出費といったやむを得ない事情がなかったり、家計改善の意志が感じられなかったりした場合に改善を促す狙いがある。

 市生活福祉課によると、市営のフードバンクは、企業や市民が寄せた食料を生活困窮者に無償提供する。生活保護費を使い切ったとして受給者が訪れることもあり、一日3食セットを必要な日数分、渡す。

 24年4~9月の半年間では、利用者のうち受給者が19人。うち4人が減額対象となった。食料の単価をはじいて翌月以降の保護費から差し引いた。

 厚労省は21年3月の通達でフードバンク利用での保護費減額は原則せず、過度な場合に検討を促す。過度とは「食費の3分の1を超す状態が続く場合」を例示。鳥取市は過度な利用もあるとして同年7月、独自ルールの運用を始めた。

 これに対し、厚労省保護課の担当者は詳細を知らず一般論だと前置きした上で「我々の考えとズレている」と問題視しており、市生活福祉課の谷村彰彦課長補佐は「自治体の裁量の範囲なのか、誤りなのか、国に確認して庁内で協議したい」と話す。

 約800世帯の受給者がいる出雲市は、事前にフードバンクを利用しないように指導。利用を把握した場合や受給者から利用の申し出があった場合は翌月以降、保護費から差し引いている。市福祉推進課の常松博雄課長は「保護費の中に食費が入っており、その中でやりくりしてもらう必要がある。常態化すれば保護を受ける他の人との不公平が生じる」と話した。

 松江や浜田など10市はフードバンクを利用しても収入認定していない。(桝井映志、片山皓平)