リチウムイオン電池材料の研究に携わった尾原幸治教授=松江市西川津町、同大
リチウムイオン電池材料の研究に携わった尾原幸治教授=松江市西川津町、同大

 島根大(松江市西川津町)材料エネルギー学部の尾原幸治教授が参加する5大学の研究グループが、長寿命かつ低価格なリチウムイオン電池材料の開発に成功した。リチウムイオン電池で駆動する電気自動車(EV)の高性能化、低コスト化の両立につながる研究で、尾原教授は材料の微細な構造を解析し、機能性の立証に関わる領域で貢献した。

 リチウムイオン電池は、EVなどに用いられ、世界的に市場が拡大している。ただ主流となっているニッケル系の材料は価格が高い課題がある。研究グループは低コスト化のため、資源埋蔵量が豊富で安価なマンガンに着目。マンガン系材料でも、ニッケル系材料と同程度のエネルギー密度(同じ体積当たりで取り出せるエネルギー量)を実現できるかどうかを実証した。

 PDF解析法と呼ばれる特殊な方法で、リチウムマンガン酸化物の微細な構造を解析し、構造を示した。高エネルギー密度をかなえる要件を解き明かすための材料になるという。論文は昨年、化学分野で世界的な権威がある米国化学会の雑誌に掲載された。

 尾原教授は、国内屈指の大型放射光施設「SPring-8」(兵庫県)で主幹研究員を務めた経歴を持ち、結晶をばらばらにした「非晶質材料」の構造を解析する専門家。非晶質化するとさまざまな特異的現象が生み出されることが近年明らかになってきたが、解明されていない部分は多く、解析のニーズは高まっている。尾原教授は「乱れた構造を理解することは、エネルギー問題への貢献につながる」と話した。

 研究グループには、次世代電池に関わる電極材料研究の国内第一人者、横浜国立大の藪内直明教授も参加している。 (今井菜月)