
世界各国から集まったトップクラスの美容師たちが腕前を競う「CMC世界大会」に、米子から挑戦した美容師がいる。米子市冨士見町2丁目の「COUPE CLAIR(クープ・クレール)」で腕を振るう大縄正貴(33)。団体戦日本代表の一員として初出場し、優勝に貢献した。流行の最先端を追う華々しい世界とは裏腹に、地道な練習を繰り返した数カ月。世界に挑んだ道のりと、これからを追った。(interviewer・藤本みのり)
#(中)野球少年時代、出会った憧れの美容師
#(下)米子にいても、東京にいても自分次第
差を埋めなければ
「Giappone(日本)」。2024年10月末、20カ国が出場してイタリア・カゼルタであった世界大会。順位発表で最後に呼ばれたのは日本。日本の優勝を意味した瞬間だった。頭をよぎったのは、練習のため毎週のように通った大阪から、米子に帰る高速バスの中で繰り返した自問自答だった。
他のメンバーとの力量差に打ちのめされ、約4時間のバス移動の中で、反省や考え込むテーマは山のようにあった。「あの時間が報われたんだ」。うれしさなのか、安心感なのか。ステージ上で何とも言えない感情が体中を駆け巡った。

大会ではステージライトを楽しむ余裕も、巨大な会場にいる多くの観客を数える暇もなかった。突然訪れた最良の瞬間に困惑。それでも今なお歓声と拍手は耳に残る。
米子からの世界挑戦は順調な足取りではなかった。...