畠田 千鶴氏
畠田 千鶴氏

 山陰中央新報社の石見政経懇話会、石西政経懇話会の定例会が19、20の両日、浜田、益田両市であった。一般財団法人地域活性化センターメディアマーケティングマネージャーの畠田千鶴氏(66)が「地方創生2・0における地域のブランド戦略」と題して講演した。要旨は以下の通り。

 「地方創生2・0」を打ち出した石破政権は「新しい地方経済・生活環境創生交付金」を設けた。ただ、内容はこれまでの政権の施策と大差なく、魅力的な地域づくりやブランディング強化が大事になってくる。

 地方創生の歴史は、1988~89年の竹下政権時に全自治体に1億円を支給した「ふるさと創生事業」から始まる。和歌山県みなべ町(当時南部川村)は特産の梅干しの栽培施設や山林造成などに資金を当てた結果、地元住民の士気が高まり、今では確固たるブランドの地位を獲得した成功例だ。

 地域ブランドとは本来、地域の活性化や持続性を高めるものだといえる。ブランドを通じて経済面だけでなく、地域に住みたくなるといった精神面も豊かにすることが重要になる。企業にとどまらず、自治体や住民も一体となって取り組むことが求められる。

 ブランディングが奏功した地域を挙げると、北海道東川町は人口約8500人のうち約6割が移住者だ。85年に「写真の町」を宣言し、写真甲子園などを積極的に開いて写真家に人気な町になったほか、日本初の町立日本語学校を開校し、手厚い支援で外国人の地元就職にもつなげた。

 岡山県倉敷市の児島地区は、日本有数の繊維産業の集積地。少子化で学生服の売り上げが低迷する中、技術力の高さを生かし官民で国産ジーンズを売り出した。既存のワイナリーやコンビナートと連動して新たな観光資源になった。

 地域ブランドを成功させるには市場規模が狭くなりすぎず、独自性を損なわないよう「希少性」と「一般化」のバランスが鍵だ。事業展開や情報発信といった段階ごとで第三者目線を大切にし、最適な方向性を見極めることが求められる。(宮廻裕樹)