島根県議会が「竹島の日を定める条例」を可決した11日後の2005年3月27日。竹島問題をテーマに朝日新聞の若宮啓文論説主幹(故人)が執筆したコラムが物議を醸した。
タイトルは「竹島と独島(トクト) これを『友情島』に…の夢想」。日韓の友好を固めるため、いっそ日本が竹島を譲ってしまい、韓国がこの英断をたたえて「友情島」と名付け、周辺の漁業権を日本に認める-といった内容だ。日本側関係者は到底認められまい。交流サイト(SNS)隆盛の現代なら“大炎上”だろう。
ただ若宮さんは、日本側が仰天の度量を見せ、損して得を取る策はないものかと提起した上で、こう締めていた。そんな芸当のできる国ではないし、だからこれは夢想に過ぎないのだ-と。夢想とは、夢のようにあてもないことを想像すること。新聞に載せるか否かは別にして誰もが行うことだ。
本紙ではきのうから、「竹島の日」20年に合わせて寄せられた読者からの提言や要望を「こだま」欄で掲載している。さすがに「韓国に譲れ」という強硬派はいなかったものの、「日韓の共有地に」との主張が全体の4分の1を占めた。中には平和友好の象徴として「ノーベル平和賞を目指して」という夢想もあった。
きょうは20回目の「竹島の日」。一人一人が領土問題への意識を高め、将来像を思い描けば問題解決につながるはず-。これは夢想より現実味の濃い理想である。(健)