米フロリダ州の私邸で記者会見するトランプ大統領=3日(AP=共同)
米フロリダ州の私邸で記者会見するトランプ大統領=3日(AP=共同)

 「まだやってる」と喜んで昨年末、大ヒット作『国宝』を見に映画館に駆け込んだ。歌舞伎俳優2人の人生を追った物語。見ていて、中国の伝統芸能・京劇の役者2人を描く1993年の名画『さらば、わが愛 覇王別姫』を思い出したのは50代以上か。

 「あの頃の中国映画は熱かった」と思い返し、年末年始は観賞に浸った。『菊豆』『紅夢』『花の影』…。テーマや描写は日本人の感覚でも鮮烈だった。同性愛や文化大革命時の暴力、アヘン中毒に封建的な家で抑圧される女性たち。日本では上映に問題なくても中国でどうだったのか改めて調べると、厳しく検閲され、長く上映が許されなかったり、改編を経て実現させたりしていた。

 道理で当時、出会った中国人に「あの作品に感動した」「主演のコン・リーが素晴らしい」と水を向けても反応が薄かったわけだ。世界的な映画祭で絶賛された傑作も、見られないのだから仕方ない。

 今も続く検閲は、体制や規律の維持を図る上で有効でも、負の側面が大きい。双方の歩みや気持ちを分かり合えない。次に会う時の話題は、かの地でも人気だった朝ドラ『おしん』(中国語表記・阿信)か三国志かと考えていると、米国のベネズエラ攻撃の一報が届いた。

 「自由の国」の大統領の愚行に激しく戸惑う。この国の映画や音楽にどっぷり浸っただけに、余計に。自主規制を迫る強権社会にはしてはならない。(板)