大名取への昇格と改名を受け、伝統文化の継承へ向けて思いを新たにする富芭紫清宗さん=松江市内
大名取への昇格と改名を受け、伝統文化の継承へ向けて思いを新たにする富芭紫清宗さん=松江市内

 地歌の人間国宝で生田流清音会家元の富山清琴(とみやま・せいきん)直門の富芭紫(とみはし)清宗(せいそう)さん(65)=松江市西川津町、本名・石橋玲子=が23日、門下では約30年ぶりとなる大名取への昇格と改名を記念した演奏会を松江市内で開く。門をたたいて20年。歩みを振り返りながら「伝統文化の継承へ向け改めて力を入れたい」と意気込みを新たにしている。 

 山陰中央新報文化センター松江教室の箏(そう)・三絃(三味線)講師を務める清宗さんは大田市三瓶町出身。10歳で箏、16歳で三味線を始め、演奏しながら弾き歌いをする伝統的な地歌に長年取り組んできた。

 転機は夫の転勤に伴う米国での生活だった。海外で活動する同年代の奏者の力量の高さに衝撃を受けた。帰国後に松江市内で教室を始め、指導する立場にもなり「このままでいいのか。もっと勉強しないといけない」と決心。夫にも「できるところまでやってみなさい」と背中を押された。

 第一人者の清琴さんの演奏会に足を運んだ。高い技量や風格に改めて感銘を受けて「この人しかいない」と決めた。2006年に入門を許され、松江から定期的に東京に通い、修業に励んだ。08年に「清」の字を許され、石橋清宗を名乗り、演奏活動や島根県内での後進指導に力を入れた。

 演奏の技量や文化を広める伝承活動、人間性や礼儀作法-。清琴さんに認められ、24年秋に門下の現役では3人しかいない大名取に昇格した。「富」の字も許され、名を富芭紫清宗に改めた。

 節目の演奏会を前に「日本の文化が見直されてきている中、実際に触れる機会は少ない。地歌三絃を広めるのが私の役目。足を止めずに取り組み続けたい」と力を込める。師の清琴さんとその息子の清(きよ)仁(ひと)さんとともに披露するのは大名取以上のみが演奏できる演目「曲ねずみ」。家の台所でねずみが悪さをするドタバタを歌や語りと三味線で活写する。

 演奏会は23日午後1時半から松江市殿町の島根県民会館で開く。入場無料。問い合わせは清音会石橋社中、電話090(7128)5672。